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〈JIMTOF2022〉最新工作機械にみる多品種少量ソリューション|vol.1

〈JIMTOF2022〉最新工作機械にみる多品種少量ソリューション|vol.1

更新日:
2024/01/10 (公開日: 2022/11/09 ) 著者: 甲斐 智
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多様化する工作機械。工作機械のコアとなる機械技術は「切削」「研削」「研磨」といった加工技術だけでなく、切削工具やツーリング・切削油・CAD/CAM・センサなどからなる総合技術です。
この記事では、2022年11月8~13日まで6日間に渡り開催されたJIMTOF2022[第31回日本国際工作機械見本市]の会場レポートを、5つのテーマに分けてお届けします。

Vol.1ではJIMTOFの会場で取材した、多品種少量ソリューションに役立つ最新工作機械をご紹介します。

〈JIMTOF2022 レポート一覧〉

工作機械における多品種少量生産

JIMTOF2022レポートについて|工作機械における多品種少量生産

多品種少量生産は、顧客のニーズにあわせた生産品目を小ロットで柔軟に製造する生産方式です。

これまで大量生産があたりまえだった自動車部品の量産ラインも、製品ライフサイクルの短縮や、EV(電気自動車)の登場によって大きく変わり、小ロットの生産が増加しています。

多品種少量生産:
消費者ニーズの多様化が進んだことで、それに応えるため多様な製品が市場に投入されており、製品の多品種少量化が進んでいます。また、生産体制を効率化させる中で、企業は在庫の削減を進めており、その分、下請け企業に対する発注頻度を高めるとともに、発注一回当たりのロットサイズを縮小しています。
引用元:J-Net21|多品種少量生産における効率的な生産方法

金属加工業界では、その受注の多くが自動車関連で占められています。
しかし激しい時代の変化によって、これまでの常識にとらわれない新たな市場開拓が求められており、半導体の設備需要を取り込むなど、旬のトレンドにスピーディーに対応できる多品種少量生産体制への移行が進んでいます。

JIMTOF2022レポートについて|JIMTOFでは多品種少量をテーマに、多くの工作機械メーカーが、最新機種を発表しています
JIMTOFでは多品種少量をテーマに、多くの工作機械メーカーが、最新機種を発表しています。JIMTOFにて取材をした多品種少量生産に役立つ最新の工作機械と、ソフトウェアなどの周辺機器をご紹介します。
JIMTOFとは?
JIMTOF2022レポートについて|JIMTOFとは?

JIMTOF(ジムトフ)は、2年に一度開催される、工作機の国際展示会です。世界四大工作機械見本市に数えられ、最新の工作機械技術が世界中から集結。第31回を迎える2022年は、過去最高の1000社以上もの企業が出展し、6日間の総来場者数は 114,158名 にのぼりました。
→JIMTOFについて詳しく解説

多品種少量生産に役立つ工作機械

工作機械では、ワークの段取りや加工ラインの変更に多くの時間を費やします。多品種少量生産では、これらの作業が増えることで生産効率が落ちてしまい、リードタイムの長期化や製造コストのアップなど、さまざまな課題が発生します。
そこで加工ラインの柔軟な変更ができるように、工作機械とロボットを組み合わせた FMS(フレキシブル生産システム)の構築や、ワンチャッキングで加工が完了する「5軸加工機」「複合加工機」の導入、多品種少量生産に適した治工具の導入が急務となっています。

ターニングセンタ × 協働ロボット

JIMTOF2022レポートについて|ターニングセンタ × 協働ロボット
ワークハンドリング|MATRIS Light

DMG森精機株式会社では、DXとGX(グリーントランスフォーメーション)をテーマに、工場全体の工程集約の自動化ソリューションを展示。なかでも注目なのが、移動式のワークハンドリング「MATRIS Light(マトリスライト)」による、多品種少量生産のソリューションだ。
同社のMATRIS Lightは、手押し台車に協働ロボットを搭載した、移動可能なロボットシステム。自動化させたい工作機械の前に配置し、現物合わせによるダイレクトティーチングで、ワークの搬入出を短時間で自動化することができる。
「日中は人、夜はロボット」など、その時々の生産体制にあわせた柔軟な対応が可能に。工場の人手不足が深刻化するなか、オペレータの代わりになるロボットとして、生産活動のスキマ時間を埋めていくことができる。

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DMG森精機株式会社

立形マシニングセンタ × 協働ロボット

JIMTOF2022レポートについて|立形マシニングセンタ × 協働ロボット
協働ロボット自動化セル|Ez LOADER

ヤマザキマザック株式会社では、協働ロボット自動化セル「Ez LOADER」と、高トルク主軸を採用した立形マシニングセンタ「VCN-460」による、多品種少量生産を提案。さらにレニショー社のゲージシステムとの組み合わせで、加工からワークの測定まで、完全自動化を実現する。
ロボットの位置補正はビジョンセンサが自動で行うため、わずか15分で設置することが可能。金型や自動車部品をはじめ、鉄やアルミの角材など、重量のあるワークの搬入・搬出もでき、中大型ワークの重切削・多品種少量生産ニーズ応える。

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ヤマザキマザック株式会社
出展ブースE5001

公式サイトhttps://www.mazak.jp/

NC旋盤 × 協働ロボット

JIMTOF2022レポートについて|NC旋盤 × 協働ロボット
移動式協働ロボットによる自動化パッケージ

オークマ株式会社では、社会課題を解決する自動化やDXの促進、脱炭素社会の実現に向けたソリューションを展示。生産形態に応じた自動化提案をするなか、参考出展として2023年春頃発売を目指すのが、移動式協働ロボットだ。
移動式協働ロボットは、ロボットセルを用いた自動化パッケージとして、従来のオークマ製の工作機械に手軽に導入することができる。
ティーチングを完了させた状態で出荷するため、セッティングが簡単。品目変更には、専用ソフトを使い、ワーク寸法をパラメータ入力することで対応する。ロボットの架台とストッカーが一体となっており、ユーザーの設置の手間が少ないことも特長だ。
「生産量が少なく自動化がむずかしい現場」「小ロットのためロボット導入をあきらめていた現場」に使って欲しいという。

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オークマ株式会社

横形マシニングセンタ × 協働ロボット

JIMTOF2022レポートについて|横形マシニングセンタ × 協働ロボット
横形マシニングセンタ| FH5000S-i

株式会社ジェイテクトでは、主軸40番・50番の横形マシニングセンタ「FH5000S-i/FH5500S-i」を展示。ジグの段取りからワークの取り出しまで、協働ロボットとの組み合わせによる効率化で、自動車部品加工における多品種少量生産を提案する。
研削盤のイメージの強い同社の工作機械だが、自動車業界で磨いてきたマシニング技術を活かし、マシニングセンタを新たに開発。機械構造を一から見直すことで、高い切削性(切削量:従来比1.2倍)と精度を実現した。
ギアケースやモータケースなどのEV関連部品だけでなく、得意とする主軸50番による建機などの重切削のニーズにも応える。

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株式会社ジェイテクト

5軸マシニングセンタ × ワークストッカー

JIMTOF2022レポートについて|5軸マシニングセンタ × ワークストッカー
縦形5軸マシニングセンタ|DA300

株式会社牧野フライス製作所では、従来の縦形5軸マシニングセンタ 「DA300」に、ワークストッカーを装備した、これまでにない自動化パッケージを提案。40枚のワークパレットと118本の工具マガジンを標準搭載し、ユーザーの自動化の課題に応える。
ユーザーの加工ワークは、半導体部品から試作金型までさまざま。多品種少量生産が増えており、ワークの種類・材質を問わず、休日や夜間でも長時間運転ができる、生産性の高い機種が求められていた。同社のDA300では、自由度の高い5軸加工によって段取り回数を減らし、作業者の負担軽減と生産性向上を両立する。

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株式会社牧野フライス製作所
出展ブースE2014


主軸30番マシニングセンタ × マルチタスク

JIMTOF2022レポートについて|主軸30番マシニングセンタ × マルチタスク
マルチタスクマシン|M200Xd1

ブラザー工業株式会社では、「無駄なく、削れ。」をテーマに、同社の主軸30番のマシニングセンタ「SPEEDIO(スピーディオ)」シリーズを展示。なかでも新製品として目を引いたのが、マルチタスクマシン「M200Xd1」だ。
同社のM200Xd1は、旋削・マシニングの複合加工を実現する、同時5軸の複合加工機。切粉を直下に落とすセンタートラフ構造で、より一層の生産性向上が実現した。
主軸30番の高速加工機として定評のある、同社のSPEEDIOシリーズだが、今回新たに複合加工機をラインナップしたことで、自動車から半導体、医療部品まで、高速加工の工程集約ニーズに応える。協働ロボットとの組み合わせによる、さらなる自動化提案も可能だ。

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ブラザー工業株式会社

CNC自動旋盤 × 機内計測

JIMTOF2022レポートについて|CNC自動旋盤 × 機内計測
主軸台移動形CNC自動旋盤|Cincom M32

シチズンマシナリー株式会社では、「今ある価値の、その先へ」をテーマに、量産に特化したCNC自動旋盤を展示。Cincom(シンコム)ブランドの主軸台移動形CNC自動旋盤「Cincom M32」で、加工不良をつくらない多品種少量生産を提案する。
CNC自動旋盤といえば、量産に特化した加工機だが、同社のM32では「くし刃+タレット」による多数の刃物搭載で、多品種少量生産にも対応。自動車や半導体部品の一次加工だけでなく、医療部品や空圧部品など、さまざまな多品種少量生産ニーズに応える。
またメトロール社の機内計測センサの搭載で、加工不良をつくらない量産加工も提案。加工後任意のタイミングでワーク寸法を計測し、加工不良の選別や追加工などを行うことで、作業者による検査工程がなくなり、生産性向上が実現する。

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シチズンマシナリー株式会社

5軸マシニングセンタ × パレットチェンジャー

JIMTOF2022レポートについて|5軸マシニングセンタ × パレットチェンジャー
5軸立形マシニングセンタ|MX-330 PC10

株式会社松浦機械製作所では、自動化に定評のある同社の5軸立形マシニングセンタMXシリーズの新製品「MX-330 PC10」を出展。パレットチェンジャーの付いたコンパクトな5軸加工入門機として、より使いやすくバージョンアップした。
同社のユーザーの7割以上は、ジョブショップと呼ばれる加工屋が多く、多品種少量生産が圧倒的に多い。量産だけでなく少量変種にも最適なパレットチェンジャーは、ひとつのパレットにつき、複数のプログラムを設定することができ、同じジグを使いながらワークの変更が簡単にできる。パレットへのアクセスも良く、段取りもしやすい。まさにエントリーモデルとして最適の5軸加工機だ。

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株式会社松浦機械製作所
出展ブースE3013


複合加工機 × パレタイジングストッカー

JIMTOF2022レポートについて|複合加工機 × パレタイジングストッカー
パレタイジングストッカー|箱兵衛Link

中村留精密工業株式会社では、24時間稼働を実現する、パレタイジングストッカー「箱兵衛(はこべえ)Link」を展示。多段積みパレットの出し入れを自動化し、現場の負担の大幅軽減を提案する。
同社の箱兵衛(はこべえ)Linkは、もともと同社の複合加工機専用として開発された「箱兵衛」を、他機械にも単体でつなげられるように新たに開発したもの。中村留製の複合加工機以外にも、他社製工作機械との連動も想定する。
ロボットのグリッパ交換もかんたんで、ワークの供給からパレットへの戻し作業までを自動化し、生産品目にあわせた多品種少量生産ラインが実現。ワーク点数が増えつつある自動車部品や半導体部品の加工ニーズに、複合加工機を含めたトータルで応える。

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中村留精密工業株式会社

研削盤 × 協働ロボット

JIMTOF2022レポートについて|研削盤 × 協働ロボット
超精密両頭研削盤|NSF-440WS

株式会社ナガセインテグレックスでは、自動化・省人化・非熟練化を実現する、超精密両頭研削盤「NSF-440WS」を展示。協働ロボットとの組み合わせによるワークの自動供給・取り出しで、研削加工における多品種少量生産を提案する。
これまでの平面研削盤(マグネットチャック利用)は、ワークに反りがあった場合、精密な研削が難しく、自動化の壁となっていた。同社のNSF-440WSではワークを「置くだけ」で超精密が実現する、チャッキング不要の両頭研磨を実現。これにより協働ロボットによる自動化が可能となった。
ベアリングやギアなど精密自動車部品をはじめ、セラミック・SiCなどの半導体向け難削材にも最適。研削能率が上がるとともに、ワークのセッティングがかんたんになり、多品種少量生産が実現する。

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株式会社ナガセインテグレックス

多品種少量生産に対応したソフトウェアも

CNC工作機械に欠かせない、ソフトウェアやCAD/CAM。これらの周辺機器も、工作機械とともに進化しており、近年では高能率化だけでなく、多品種少量に対応したソフトも続々と登場しています。

生産管理 × ソフトウェア

JIMTOF2022レポートについて|生産管理 × ソフトウェア
生産管理システム|TECHS-BK(テックス・ビーケー)

株式会社テクノアでは、導入実績4,200社超の生産管理システム「TECHS(テックス)シリーズ」を展示。なかでも注目なのが、多品種・小ロットの部品加工業に特化した、生産管理システム「TECHS-BK(テックス・ビーケー)」だ。
これまで、多品種少量生産は、量産とくらべ品番や工程が決まっていないことも多く、生産管理が難しいとされてきた。同社のTECHS-BKは、多品種少量生産の複雑になりがちなデータを一元化。一品一様の機械加工でも、進捗や原価が見えるようになる。
多品種少量が多い試作や金型加工、専用機・半導体製造装置の部品加工など、自社技術を持った中小製造業に最適だ。

株式会社テクノア
出展ブースE4033

JIMTOF2022 多品種少量ソリューションまとめ

ここでは、JIMTOF2022にて取材をした多品種少量生産に役立つ最新の工作機械をご紹介しました。
多品種少量生産のトレンドは一時的なものではなく、消費者ひとりひとりのニーズに応える「マスカスタマイゼーション」の浸透によって、より多品種・少量に細分化されていくものと思われます。今後の工作機械の進化にも注目です。
(製品の最新情報については、必ず各メーカーの公式サイトよりご確認ください)

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この記事の編集者・プロフィール

甲斐 智(KAI Satoshi)
甲斐 智(KAI Satoshi)

1979年 神戸生まれ
多摩美術大学修了後、工作機械周辺機器メーカーの販売促進部門
15年以上に渡り、工作機械業界・FA業界のWebマーケティングに携わる
メーカーでは各種技術専門誌へ寄稿
文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」参加企業

2020年に「はじめの工作機械」を立ち上げ(はじめの工作機械とは

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