SPHCの要約
SPHC(熱間圧延軟鋼板)は、再結晶温度(約900~1,200℃)以上で圧延された低炭素鋼で、黒い酸化皮膜(黒皮)を持つことが特徴です。 柔らかく加工しやすい一方で強度は低く、コストが安いため、自動車ボディや家電外装などの大きな部品に多く使われます。
SPHCの特徴
- 加工性が高い:炭素量が少なくやわらかいため、曲げ加工や成形加工に適する。酸化皮膜を除去すれば、塗装性・絞り性がさらに向上。
- 入手しやすく安価:熱間圧延により生産効率が高く、SPCCなどに比べて工程が少ないため、コストが低い。板厚1.2~14mmと厚みの選択肢も豊富。
- 強度が低い:引張強さは270MPa以上と下限のみ規定され、強度が求められる部品には不向き。
SPHCの種類
SPHCを含むSPH材には、炭素含有量の違いによって以下の4種があります。
- SPHC:標準的な熱間圧延鋼板。汎用的。
- SPHD:炭素量がやや少なく、絞り加工に適する。
- SPHE:深絞り用。変形性に優れる。
- SPHF:最も炭素量が少なく、絞り・伸び性に最も優れるが、強度は低い。
酸化皮膜と表面処理
SPHCは黒皮(酸化皮膜)によって一時的に防錆性を持ちますが、皮膜の剥がれやピンホールにより部分的に錆が発生することがあります。 そのため、使用前に酸化皮膜を除去し、塗装・メッキなどで表面保護を行うのが一般的です。
- 酸洗処理:酸を使って黒皮を化学的に除去したものをSPHC-Pと呼ぶ。
- ショットブラスト:金属粒を吹き付けて物理的に皮膜を除去し、表面を微細に粗化して塗装密着性を向上させる。
SPHCとSPCCの違い
SPHCとSPCCは、どちらも炭素鋼板ですが圧延温度によって特性が異なります。
| 項目 | SPHC(熱間圧延) | SPCC(冷間圧延) |
|---|---|---|
| 圧延温度 | 高温(再結晶温度以上) | 常温(再結晶温度未満) |
| 表面品質 | 酸化皮膜あり(黒皮) | 滑らかで光沢あり |
| 寸法精度 | やや低い | 高い(薄板も可) |
| 加工硬化 | なし | あり |
| コスト | 安価・流通量多い | 高価・工程多い |
SPHCの切削加工ポイント
- SPHCは柔らかく、主に切断・曲げ・溶接に使われる。
- 穴あけやタップ加工などの軽切削では、低炭素ゆえに加工しやすい。
- 黒皮を除去した後は錆びやすくなるため、加工後は速やかに表面処理を行う。
まとめ
SPHCは、安価で入手性に優れた熱間圧延軟鋼板で、成形性に優れる一方、強度や寸法精度には劣ります。 表面処理や黒皮除去を行うことで用途が広がり、大型部品やコスト重視の構造材に最適です。 高精度・美観重視の製品では、冷間圧延材であるSPCCが使われます。
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